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 仕事帰り、駅で偶然君に出会った。 「ようやく定時で帰れたから真っ直ぐ帰るつもり」と君。私は思わず「それにしては改札を真剣に見てたよね。彼女と待ち合わせじゃないの?」と胸の内が焦げるのを無視して聞いた。 「いや、僕ね……よく考えるんだ、世界の終わりを。そのピンチを救うのが自分だって考えると死んじゃいけないよねーってなるから」  私は思わず君の腕を掴んだ。 「帰ろう。明日から有給取ろう。っていうかもう仕事辞めなさい。君が嫌じゃなければ私が養ってあげてもいい」  キョトンとしていた君の両目から涙がこぼれ落ちた。
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