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目を覚ますと、真っ白な天井が目の前に広がっていた。自室ではない、でも、どこかで見たことがある。
ここは、そうだ。
母の最期の場所。病室だ。
僕が起き上がったのを見て、誰かが声を上げた。
「おにいちゃんおきた!」
たっくんはそのままの勢いで、僕のベッドに飛び込んでくる。衝撃で体のあちこちが痛み、これが夢ではないらしいことが分かった。
どうやら賭けに勝ったらしい。
あらかじめ轢かれることがわかっていれば、うまく衝撃を逃がせないかなんて考えていた。大人ではだめでも、子どもの軽さなら。そんな、ダメで元々だったけれど、どうにかなったらしい。体のあちこちは痛いけれど。
たっくんの声に、誰かの足音が近づいてくることがわかった。両親だろうか。
僕は怒られるだろうか。それとも泣かれるだろうか。
どっちでもいいか。
「おにいちゃん、なにしてあそぶ?」
たっくんの容赦のない言葉に、僕は思わず苦笑いを浮かべた。遊べさえすればいいと思っているのだろうか。きっとそうなんだろうな。まぁ、でも、たっくんが楽しいのであれば、それでいいか。
退院できるのは、一体いつになるだろう。呑気に、そんなことを考えた。
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