終わらない夏休み v2

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 たっくんは僕の8歳下の男の子だ。父の再婚相手が連れていた子で、今は僕の弟である。  人見知りする子だと聞いていたたっくんは、けれど僕にはすんなりと懐いた。多分、いろんなゲームを持っていたからだと思う。父の影響でオセロやトランプ、将棋等をはじめとした、いろいろなボードゲームを持っていたおかげで、たっくんとのコミュニケーションはそれほど難しくはなかった。今まで見たこともないようなおもちゃに囲まれ、たっくんの目はキラキラと輝いていた。僕も僕で遊び相手ができたことが嬉しかったと思う。別に友達がいなかったわけじゃないけど。  ルールを教えるのは大変だったけど、たっくんは持ち前の好奇心でどんどんと吸収していき、どんなゲームもすぐに僕と遊べるようになっていった。僕も大して詳しくはなかったけど、そこは年の功とか、そんな奴で頑張って教えていった。  困ったのは、たっくんがとにかく負けず嫌いだったことだ。ルールをすぐに覚えるとは言っても、やはり歳の差による経験値には勝てない。真面目にやれば僕が当然に勝ってしまう。僕もそれなりに年上のイゲンを保ちたいのもあって、ついつい勝ってしまうのだけど、そのたびにたっくんは「もういっかい!」と挑んでくる。段々いい感じに戦えるようになってきた辺りで、僕はわざと負けてやるのだが、ここで更に困ったことに、たっくんはそういうのに敏感だった。わざと負けたことが分かると、不満そうに頬を膨らませて「ちゃんとやって!」というのだ。だから僕は丁寧に丁寧に、接戦を演じたうえで、わざと負けてやる。そうしてようやく、たっくんは満足してくれる。まぁ、これも年上の役割だろう、なんて僕は自分に言い聞かせたりしてみた。  そうして僕の一日は、たっくんの「もういっかい!」で過ぎていくことになる。義母の、晩ご飯の声かけを、いつもたっくんは不満そうに聞いていた。
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