終わらない夏休み v2

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 夏休みに入り、僕がたっくんと過ごす時間はますます増えていく。父と義母はそれぞれ働いていることもあって、自然にたっくんの面倒は僕が見ることになった。僕達は棚から取り出したゲームを、日替わりで遊んでいった。たっくんの「もういっかい!」を何度も聞きながら、僕達は長い長い時間を過ごした。  違和感を覚えたのはいつだっただろう。最初は、やけに日が伸びたな、と感じるくらいだった。夏になると太陽が出ている時間が長くなることは知っていたので、そのせいだろうと思っていた。  はっきりとわかったのは、時間を測るゲームで遊んだ時だった。制限時間を五分として、壁掛け時計でそれを測ろうとした。三時に始めれば、五回も遊べば大体三時半になる。当たり前の話だ。それなのに、ゲームが終わってまた一から始めようとすると、時計はいつの間にか三時に戻っているのだ。見間違え? それとも、時計が壊れたんだろうか。いや、違う。ちゃんとゲームが終わる時には時計は三時五分あたりを指している。気のせいでも見間違いでもない。でも、壁掛け時計が巻き戻ることなんて起こるはずがない。念の為、リビングにあるデジタル時計を持ってきてみたが、結果は同じだった。  ゲーム中、ずっと時計を見つめ続け、時間が巻き戻るそのタイミングが分かった。たっくんが「もういっかい!」という時だ。すると、時計はまたゲームを始める時間に戻っていたのだ。
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