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この現象に気付いた時、僕のテンションはめちゃくちゃ上がった。すごい! まるで漫画やアニメみたいだ! こんなことが本当に起きるなんて! ノーベル賞だって獲れちゃうんじゃないか? すごいすごいと飛び跳ねてはしゃいだけれど、やがて時間が過ぎるにつれて、落ち着いていってしまった。
何故なら、この現象は僕が起こしているわけではないからだ。たっくんの「もういっかい」をきっかけに起きている。つまり、時間が巻き戻るかどうかは僕にはどうすることもできず、たっくん次第なのだ。
僕は時計を見ながら、より詳細に、どういう時に時間が巻き戻るのかを確認していた。最初はたっくんの「もういっかい」という言葉がきっかけだと思っていたが、どうやらそればかりでもないらしい。何度か試していくうちに、たっくんが不満だった時に時間は巻き戻り、満足している時には時間が進むということが分かった。また、ゲームを始める前に戻るだけで、自由に都合のよいタイミングに巻き戻せるわけでもない。要は、ただ二人で遊ぶ時間が増えただけで、それ以外のことができるわけではない。なんだ、それじゃ何もできないじゃないか。僕はがっかりしてしまった。
また、僕ら以外にはどうなっているのか気になって、その日一日何か変なことがなかったか、父や義母に尋ねたりもしたけれど、時間が戻っていることに気付いているのは僕だけのようだった。なんならたっくんも、時間が戻っていることを分かっていないみたいにも見えた。ゲームに夢中でそれどころではないのかもしれない。僕だけが、この不思議な現象を知っていた。
結局、この現象で得られたのは、たっくんのあやし方のコツと、夏休みの宿題に取り組む時間が少しできたくらいだった。まぁ、それでも十分凄いことなんだけど。
こうして、僕は人より少し長い夏休みを過ごしていた。たっくんと二人で。
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