終わらない夏休み v2

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 事態が変わったのは、ある雨の日のことだった。明らかに慌てた様子の父が、乱暴に玄関を開けて帰ってきた。いつもより明らかに早い帰宅時間だった。何があったのかと尋ねる間もなく、父は僕とたっくんを車に乗せて、走り出した。向かった先は、街の大きな病院だった。  目を閉じた義母が、ベッドに横になっていた。  いつもニコニコと笑っていた義母の顔が、ただ青白く、硬かった。  父が誰かと話す声を、どこか遠く聞いていた。事故だったとか。雨の中、横断歩道を渡っていたところ、とか、相手もダメだった、とか。  そっか、と僕は思った。  義母が、死んだのか。  人が死ぬところを見たのは初めてだった。何かで聞いた通り、本当に眠っているみたいに見えた。でも、まったく動かなくて、なんか人形みたいだな、なんて思った。  人が死ぬと悲しいものだなんて聞いていたけど、あんまりそういう気持ちにはならなくて。悲しいと泣くらしいけれど、僕は今までそういう泣き方をしたことがないから、どうやって泣くのかとか分からなくて。泣かないといけないのかなとか思ったけど、やっぱり別にそういう気持ちにはなれなかった。やっぱりどこか、義母は他人という気持ちがあったんだろうな、なんて冷静に考えてしまった。もし事故に遭ったのが父だったらどうなんだろう、と思ったけれど、上手く想像できなかった。
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