終わらない夏休み v2

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「おかあさん、ねてるの?」  たっくんが僕に尋ねた。なんて答えればいいのだろう。 「そうみたい。お仕事で疲れてるんだね」  僕は少し悩んだ後、当たり障りのない言葉を選んだ。 「そっか。たいへん」 「そう、大変」 「でも、あしたおやすみのひだもんね」 「そうだね」 「あしたおきたらみんなであそぼうね」 「……どうかな」  そこで、言葉に詰まってしまったのがよくなかった。たっくんは、そういうのに敏感だった。僕の言葉に何かを感じたたっくんは、義母にそっと近づく。小さな手で義母の顔に触れ、顔色が変わる。気付いてしまったのだろう。もう、義母が動かないことに。 「ねえ、おかあさんねてるんだよね?」 「そうだね」 「いつおきる?」 「いつかな、ちょっとわかんないな」 「またあそべる?」 「どうかな」  すぐに起きるよ、なんて僕には言えなかった。だから僕はただ誤魔化した。死とは何なのか、僕にも分からないことを教えることはできなかった。  そして、たっくんは泣き出してしまった。  おきて、おきてとたっくんが義母の頬をはたく。義母だったそれは、何も反応を示さない。それを見て、やだやだとたっくんが癇癪を起こす。 「だっこ! だっこしてくれるっていった! おきて!」  休みのたびに甘えん坊のたっくんは義母にだっこをせがんでいた。けれど、それはもうできないのだ。もう二度と。  どうしよう、と思いながら、僕はたっくんに声をかけようとして、そして。 「いっかいだけだから!」  たっくんが、そう言った。
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