第一章 十月に雨が降る

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「まあ、どこにいても同じか……」 「いえ、年年歳歳と七ツ屋は、文句を言っていました」  しかし、駐車場を建物の横に用意されたので、ご機嫌になった。しかも、駐車場には整備工場が併設され、一鉄工房出張所になった。 「それで、この三毛の嘆きは何だ???」 「それは……」  先ほどから、俺の背には鼻水が付いている。臭いと言いつつも、三毛は俺の背で顔を拭くのだ。 「夏目さん、梅花の辰見 峻人(たつみ しゅんと)を知っていますか?」 「級友だろう?知っている」  道原の一芸は翻訳で、何カ国語を理解し、かつ話す事が出来る。それも、歴史や地理、文化にも精通していて、言葉の理解度が高い。  そして、その副産物として、言葉が足りない仲間の通訳もしていた。 「夏目さん、辰見の一芸も知っていますか?」 「人の未来と過去の姿が分かる事だ」  辰見は真面目な生徒で、本当ならば菊花で英才教育を受けていただろう優秀さがあった。しかし、その微妙な一芸のせいで、梅花になってしまったのだ。 「辰見は、どんなに姿を変えていようと、その人間が誰なのか分かるのです」 「俺の姿には驚いていたぞ」
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