第六章 夜に咲く花も在る

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 この物産店も人気で、買い物をしている人も楽しそうだ。たまに文句を言っている人もいるが、それは売切れで買えない品物があった事に対するものだった。  それに売れて評判が良いと、店員も明るい。だから、多少の文句も笑って許している。 「……余裕が大切だな」 「夏目さん、いつも余裕がないですからね……」  俺は確かに余裕がないが、人生は楽しいものだと思っている。 「亜子さんが、遺体を見つけてしまったのと言ったのは、もう犯人を知っていて、このままで良かったという意味か……」 「そうかもしれません」  ここで弥生が人殺しの犯人になった場合、この地元物産展店や、遺体が埋められていた庭園見本園への影響は大きい。 「まあ、俺はもう公安ではない。犯人を捕まえる事など、どうでもいい」 「そうですね」  そもそも、玲央名にきた依頼も、婚約者を探す事で事件解決ではなかった 「平和なら、それでいい」 「雨が降っても、それで植物が育つようなものですか?」  事件が再発しないのならば、そっとしておくことも正解だ。俺は、警察でも刑事でもない。 「さてと、では、次は俺の話ですね」
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