第七章 夜に咲く花も在る 二

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 辰見が確かめてみると、孔士には綾人の記憶など無かった。孔士は孔士として生きているが、辰見には失踪している綾人と同一人物と見えてしまう。 「遺伝子で調べて貰うか……」 「もう実行しました。四乃守に頼んでみると、同一人物でした」  だが、クローンなどではなく、受精卵から成長した普通の人間だった。 「四乃守はクローンに詳しく、孔士君の場合はクローンとは違うと言っていました」 「クローンでもなく、孔士を産んだのか……」  そんな馬鹿な事があるのかと悩むが、地下社会には万屋という、絶滅種を産む者もいるので無いとは言い切れない。 「あ、今度はバイクが来た」 「次男の龍平君です」  ヘルメットを取った龍平は、端正な顔立ちのややマッチョな青年だった。しかも、顔が亜子によく似ている。 「龍平君は、亜子さんの父親と同一人物です」 「んぐ????????」  そして、同じく四乃守に調べて貰ったが、遺伝子が同じでもクローンではなかった。 「こんな事が在り得ますか?」 「地下社会は何でもアリだから、こういう事もあるかもしれない。でも、ここは通常社会だ」
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