第七章 夜に咲く花も在る 二

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 確かに、どちらも伝承で、今分かっている事には意味がない。  俺が悩んでいると、遠くで犬が吠えていた。しかも、最近は聞かなくなった、遠吠えだ。 「遠吠えだ」 「ここでは珍しいものではなく、毎日聞こえています」  犬も飼われてゆく内に、人間のルールに縛られ、適応してゆく。だから、遠吠えをする犬が消えていった。 「ウオオオオオンン」 「近いな」  犬の姿は見えないが、かなり近くで遠吠えがした。すると、応答するかのように、三か所から遠吠えが聞こえた。 「ワオオオン」 「ウオオオオンンン」 「ワオオオイイウ」 「道原、翻訳」  聞いていると、業務連絡をしているように感じる。そして、ボス級が近くにいる気配がする。  「ワアアアアアオン」 「タイミングがずれている奴もいるな」  そして道原が本当に翻訳し、周辺の不審者情報だと言っていた。 「ワアアオン」 「夏目さんも遠吠えしないでください!」  俺も遠吠えしてみたが、声が遠くまで響かない。やはり、体の大きさに違いがあるのかもしれない。 「ワオオオオオン」  だが返事がきた。 「道原」
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