第七章 夜に咲く花も在る 二

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「はいはい、翻訳ですね」  俺の遠吠えに対する返事は、心配するな、守ってやるから泣くなだったらしい。 「酒くれと言ったのに……」 「悲鳴に聞こえたのでしょう」  そもそも、猿と犬は会話が出来なかったのかもしれない。 「うむ……辰見が帰って来なかった理由は分かってきた」 「そうですか!」  この犬達は、百年前の写真に写っていた犬達だ。そして、周辺を走り回り、風が過ぎるような音を立てている。だが、耳を澄ますと、小さな足音がした。 「トントン?」  足音がするという事は、実在する生き物だろう。 「肩を叩かれた????」 「何もいませんよ!!!!」  これは、謎ではなく怪奇現象かもしれない。  だが、説明しようとすると、亜子が家から出てきて、こっちに向かって手招きしていた。 「隠れたつもりでも、尻尾が見えていますよ」 「尻尾???」  俺に尻尾はあったのだろうか。  俺が尻の辺りを確認していると、亜子がやってきて、俺を抱き上げた。 「見つけた!」 「よく見つけましたね……」  亜子の家から、この茂みは見えていなかっただろう。
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