第一章 十月に雨が降る

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 菊花は、優秀な人材を育てる場で、既に職に就いている者を在籍させない。  だから、年年歳歳の中島 隼人や、七ツ屋の荻野 玲生なども、優秀だが梅花になっている。辰見も同じで、親が経営している探偵事務所を手伝っているので、菊花に在籍する事が出来なかった。 「夏目さんは、すこし例外で……人間の枠から外れていたでしょう……」 「猿だからな」  俺も辰見が有能という事は知っている。それも、本人の努力だ。 「辰見の場合は、過去を見ると、現在地が分かるようなところもあって、人探しには有能です」  だから辰見は人探しに適していて、探偵事務所で重宝されてしまった。 「辰見の場合は、姿が分かるという面ではなく、プロファイリング技術が凄い」  プロファイリング技術は辰見の努力の賜物で、俺はとても評価している。 「……それで、その辰見が俺に助けを求めていて……あれ、その……」 「辰見は、父親の所に行ってくると言ったきり、一週間ほど姿を見せません」  道原が三毛の話を丁寧に聞き取り、心配した三毛が夢で辰見を見た事を知った。
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