第七章 夜に咲く花も在る 二

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 きっと、凜子や檸文、美柑に命じられている事を、孫娘にもしてしまったのであろう。 「でも、妻も喜んでいました。子供の扱いが、とても上手くて……」 「やらされていたからな……」  そして、孔子が玲央名を恨んでいるという事もなく、良い関係が築けていると分かった。 「それで、そっちが次男で龍平。大学生」 「どうも」  龍平は不愛想だが、目が優しい。そして、俺を掌に乗せると、部屋の全貌を見せてくれた。 「野菜は好きか?」 「意外と好きだ」  テーブルや部屋は、ベルサイユ宮殿のような造りだったが、並んでいる料理は地元のもので、そのミスマッチが良い。ここで、食事も洋風だったら、食欲が失せてしまいそうだった。 「野菜は美味しいか?」 「ものによる」  龍平は、新しい野菜を作りたいと言っていた。そして、品種改良を繰り返しているらしい。 「猿君に、直に野菜の感想を聞ける機会なんて、滅多にない!」 「まあ、普通はそんな機会はない」  ここの野菜は美味しい。それに、料理方法も素材の味を生かしている。これは、この国の良い所で、調味料で誤魔化すという事をしない、潔い味だ。
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