第七章 夜に咲く花も在る 二

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 しかし、それが正解なのだ。  俺が気付いた事を道原に説明しようとすると、亜子に睨まれてしまった。 「食事は、ないがしろにして良いものではありません!」 「はい……」  これだけの食事を用意するのは、時間も手間もかかる。だから、しっかりと感謝して食べなくてはいけない。 「いただきます」 「召し上がれ」  しかし、事件の事も気になる。そして、辰見が言っている事も気になる。 「夏目ちゃん、集中!」 「はい!」  亜子は二人の息子を育てているせいか、俺の行動を先読み出来るようだ。俺は、更にその先を読もうとするが、どうもうまくいかない。 「あ、美味しい……煮物は自分では作らないからな……帰る時は買ってゆこう」 「サラダも美味しいのよ」  ここは、とにかく野菜が美味しいのだ。  俺が黙々と食べていると、窓の外を大きな犬が横切っていった。だが、それは一匹ではなく、何頭も群れていて、風のように軽やかだった。 「犬か……」 「犬は人間と信頼関係を築ける、数少ない仲間よ」
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