第七章 夜に咲く花も在る 二

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 亜子が玲央名を呼んだのは、自分に何かあった時に、息子達を頼みたかったからだ。だからに二十年前の失踪事件や、弥生の事は、本当にどうでもいいのだ。  亜子は少し俯き首を振っているので、俺の言葉を否定しているのだろう。 「……玲央名さんは、別に妻と子供がいる。それなのに、私達家族に、とても良くしてくれました。その事を玲央名さんに言うと、不思議そうにしていました。理由を聞くと玲央名さんは、全員家族だよと言いました」  玲央名は、息子達の運動会や発表会には顔を出し、更に一緒にキャンプなどもしたという。だから、孔士はグランピングの施設を作り、玲央名と一緒に味わった、自然の中で過ごす楽しさを伝えようとした。  きっと、孔士にとって玲央名は、いい父親だったのだろおう。 「でも、親父は裏社会で人探しを職業にしていたので、殆ど帰ってきませんよ」  玲央名は裏社会の家族の所には、あまり帰っていなかったらしい。 「時雨探偵事務所。時には雨、私達は雨で結ばれている家族です」  亜子が言うには、離れて会う事はなくても、凜子や檸文、美柑とも繋がっているのだと言った。 「家族か……」
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