第八章 夜に咲く花も在る 三

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第八章 夜に咲く花も在る 三

 夕食が終わり、借りている離れまで歩いていると、何故か孔士と龍平まで一緒に歩いていた。 「あの、孔士さんは家に帰らないのですか?」 「妻は実家に帰っているから……食事が大変で、俺も実家に帰る事にした。それに、ここからの方が、職場も近い」  ここからというのは、もしかして母屋の事なのであろうか。 「龍平さんは……」 「夜道は危ないので送ります」  送ってくれるのはいいが、ここは自分の家の敷地内だろう。  そして二人供、喋る猿に興味津々だった。 「俺は玲央名さんに連れられて、地下社会に行った事があります。そうか……地下社会は本当に何でもアリだ」 「地下社会は関係ない」  俺が喋っているのは、地下社会には関係ない。 「でも、夏目さん。地下社会の出身ですよね?」 「そうだ」  通常社会の人間が、地下社会を知っている事だけでも珍しいのに、俺の事まで知っていたらしい。 「俺の事も、玲央名さんに聞いたか?」
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