第八章 夜に咲く花も在る 三

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 そして離れに近付くにつれ、外灯の無い夜の道は、本当に真っ暗になった。 「真っ暗だな」 「今日は月があるので、明るいほうです」  やっと、龍平が送ると言った意味が分かった。ここでは、懐中電灯など大した意味もなさず、ただ暗闇があるのだ。  そして、道がよく見えないので、慣れていないと畑に落ちてしまう。 「月が明るい」 「月が大きい……」  星も綺麗に見えている。しかし、この月の見え方にも驚く。  この土地では、月が本当に大きく見えていて、肉眼で。その凹凸まで確認出来そうだ。こんなに近い星が、そのまま空に止まっているというのは、かなり不思議だ。 「月は夜の為にある」  月があるから、地球の夜は真の闇にはならない。 「……猿と会話していると、不思議な気分です。あの、抱えてみてもいいですか?」 「断る!」  道原は俺を抱えているのではない。俺が道原に乗っかって移動しているのだ。  それは、その方が楽だからだ。  この猿の体は燃費が悪く、歩いていると体力を激しく消耗してしまうので、遊べなくなってしまう。だから、省エネの方法として、道原に乗っかっているのだ。
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