56人が本棚に入れています
本棚に追加
「道原、前進!」
そして、道原は俺の命令で動く。
「どうぞ」
「あ、酷い」
だが、道原を俺の首を掴むと、孔士に渡していた。
「ありがとう」
「うぐぐ」
俺を受け取った孔士は、じっと見つめてから、赤ん坊を抱くように優しく扱ってくれた。
「温かい……感動する。これは、生き物の暖かさだ……」
「恒温生物だからな……」
孔士は長男と初めて会った時のようだと、感動しているが、俺はただの猿だ。大事な息子と一緒にしない方がよいだろう。
そして、孔士と夜道を歩いていると、周辺をガサゴソと動き回る影があった。
この影は、影として認識できるが、実態が把握できない。物陰などを凝視してみたが、やはり本体を認識する事が出来ない。大型犬を上回る程の大きさで、四つ足で素早い。動きは犬そのものなので、影しか見えていないが犬なのであろう。
それも一匹ではなく、数匹が周囲に存在していた。
「犬は放し飼いなのか?」
「飼っている犬は、家で大人しくしています」
すると、これは飼っている犬ではないという事だ。
最初のコメントを投稿しよう!