第八章 夜に咲く花も在る 三

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「道原、前進!」   そして、道原は俺の命令で動く。 「どうぞ」 「あ、酷い」  だが、道原を俺の首を掴むと、孔士に渡していた。 「ありがとう」 「うぐぐ」  俺を受け取った孔士は、じっと見つめてから、赤ん坊を抱くように優しく扱ってくれた。 「温かい……感動する。これは、生き物の暖かさだ……」 「恒温生物だからな……」  孔士は長男と初めて会った時のようだと、感動しているが、俺はただの猿だ。大事な息子と一緒にしない方がよいだろう。  そして、孔士と夜道を歩いていると、周辺をガサゴソと動き回る影があった。  この影は、影として認識できるが、実態が把握できない。物陰などを凝視してみたが、やはり本体を認識する事が出来ない。大型犬を上回る程の大きさで、四つ足で素早い。動きは犬そのものなので、影しか見えていないが犬なのであろう。  それも一匹ではなく、数匹が周囲に存在していた。 「犬は放し飼いなのか?」 「飼っている犬は、家で大人しくしています」  すると、これは飼っている犬ではないという事だ。
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