第八章 夜に咲く花も在る 三

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 こんなに沢山の犬が、放し飼いもしくは、野生化している土地などない。これはかなり危険なのではないのか。  しかし、犬が襲って来るという事はなかった。 「犬を怖がって、可愛いな……」 「兄さん、俺にも抱えさせてください」  そして孔子が、俺を龍平に渡していた。 「うわ!」 「!!!!!!」  孔士と比べて、龍平は抱える事が、物凄く下手だ。この持ち方は、まるでダンボール箱を運んでいる時と同じだ。本人は、怖くて力が入れられないのかもしれない、丸い物をクレーンで運ぶようなもので、とても落ちやすい。  俺は転がりそうになり、慌てて掴もうとした龍平の指を掴んだ。  すると、龍平はヘナヘナと座り込み、俺の握った手を確認していた。 「…………指が五本ある……」 「当たり前だろう」  猿というのは、五本指ではなかったのだろうか。そんなに驚く事ではない。 「……こんなに短くて、小さいのに爪がある……」 「小さくない!!」  そして、龍平はゆっくりと抱え込み、立ち上がると歩き始めた。 「……これは、俺が守るべきモノ」 「モノではない!」
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