第八章 夜に咲く花も在る 三

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 しかし、龍平が呟くと、周囲を囲むように、影の犬が整列したように感じた。  その気配には、迫力があり、強いて言うのならば、象かトラに囲まれたイメージだ。そして、ゆらゆらと燃えるように揺れていて、犬よりも大きかった。 「牛!」 「牛ではありません!」  そんなに否定しなくてもいいだろう。大きさが牛くらいだと思っただけだ。  その牛のような大きさの犬が、月に照らされて更に暗く、闇のように並んでいた。そして、俺の方を見て笑った。 「クククククオオオオオン」 「クオオオオンンンン」 「ケケククククククケケケケオオオン」  笑いを堪えて遠吠えするので、妙な鳴き声になっている。笑うか吠えるか、どちらかにすれば良いのに、そこは平然を装っている。だが動揺が全身に出ていて、前足も震えているし、毛も揺れている。多分、かなり笑いを誤魔化している。  もしかして、ここは笑ったらまずい場面なのかもしれない。 「ケケケケケケケケ」 「夏目さん、一緒に笑わないでください!」  しかし、俺もつられて笑ってしまった。 「ハハハハハハハ!ここで笑うのか……」
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