第八章 夜に咲く花も在る 三

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 この穴の深さからすると、井戸にも近い。しかし、水があった形跡が無かった。そして、山を見ていた観音像は、その向きに意味があった。犬達も山を見ているので、山からの災害から守るという説も立てられる。しかし、近年では、この山で災害が発生したという記録はない。  でも、多分、犬達は俺と同じモノを見ている。 「犬達……温泉は好きか?」  そして、俺の問に影の犬が揃って頷いていた。 「連れて帰る!!」 「夏目さん、変な生き物は拾わない!最後まで面倒を見られるのですか!!」  面倒を見ようとするからいけないのだ。俺は、面倒を見て貰うのだ。 「この事件というのか……、この現象は重なっている偶然もある」  まず、弥生がサイコパスであることと、影の犬達は無関係だ。  そして、廣川の周辺で繰り広げられる殺人は、嫉妬からくるものだ。だが、廣川の直径が無事であるのは、この影の犬達が守っているからだろう。 「だが、殿様と犬、天女と姫様の伝承は、多分、一緒の系列だ」  これは影の存在と人、二つが出会った為の悲劇だ。
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