第九章 夜に咲く花もある 四

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第九章 夜に咲く花もある 四

 俺が車の荷物を確認していると、周囲から笑い声が聞えてきた。その笑いも、ケケケケケケという小さなもので、まるで物音のようにも聞こえる。  そして闇に木霊するように、あちこちから渦巻くように聞こえてきた。 「ケケケケケケケケケ……」 「ケケケケケケケケ……」 「ケケケケケケケケケケケケ」 「夏目さんまで笑わないで下さい!」  しまった、つい笑いにつられてしまった。 「うるさい!」  ここは、怒っておくべきだろう。  しかも、薬がなくなっている理由が分かった。 「お前達…………」  影の犬の中に、俺を見て笑っている二匹のゴリラがいのだ。  そのゴリラは全身が黒く、影のゴリラといった姿だ。そして、影の犬を数えると、ゴリラを含めて最初に見た頭数だ。 「お前達……やったな」  俺が怒っていると、リーダー格らしき一匹がきて、俺の前で寝転び腹を見せた。 「服従ですね……」 「謝って済む問題だと思ったのか?」  俺が凄んでいると、全員がやってきて、俺に腹を見せた。 「ゴリラ」 「クウウウン」
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