第九章 夜に咲く花もある 四

2/15
前へ
/168ページ
次へ
 ゴリラの大きさが、本物のゴリラの雄ほどもあるのが気に入らない。  どうして俺の場合は、オレンジの子猿になってしまうのだ。 「ワウン、ワンワン」  そしてリーダーの説明によると、俺からこの薬の匂いがしていたので、気になってしまったらしい。 「英トに電話するか……」  俺が英トに電話すると、何故か珠緒が出て怒っていた。そして珠緒は、この影の犬が、地球上の生物とは異なるが、見た事のある遺伝子を持っていると説明してくれた。 「生き物なのか?」 『当たり前だよ、夏目ちゃん。心臓が無いからといって、死んでいると思うのは浅はかだよ』  この犬達には、心臓が無かったのか。  そういえば、先程から聞いていても、心音がない。  そして、この影達は地球上の生物とは異なるが、宇宙には存在しているメジャーな存在と教えてくれた。 『影のように見えるけど、目で見ているからだよ。宇宙空間には光の無い場所も多いから…………光の反射で見ている、この星の生物のほうが珍しい』  そして、珠緒の複眼ならば、犬の姿を正しく把握していた。 『でも影だ』 「それは、俺にも分かる」
/168ページ

最初のコメントを投稿しよう!

56人が本棚に入れています
本棚に追加