第九章 夜に咲く花もある 四

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 この影という生き物は、珍しい生き物を見つけて、観察し保護する役目を持っているという。 『夏目ちゃん、珍しい生き物だから……』 「珠緒ちゃんに言われたくない!」  そして、今回の事件に深く関わっているのが、この影という存在らしい。 『三毛君がいるのならば、影達の過去を見るといいけど……つまりはね……影には雌が産まれない。だから繁殖するには、他の生物に頼るしかない』  つまりは他の生物の繁殖に頼るので、影は旅を続けているらしい。 「ここの影、この土地に長く存在している」 『千年や二千年は、宇宙の生き物にとっては一年、二年の感覚だよ』  ではまだ、一年は経過していない。 『影達は子孫を見守る習性がある。だから、その土地には、不思議な生命がいるはずだよ』  遺伝子が見えている珠緒は、人類の中にも影が混じっている事に気付いていた。そして、もう影の意識を保っていない者も発生しているという。 『幽霊みたいにいわれる存在には、影という事を忘れた影もいる。長く同化していると、自分が人間だと思い込むのかもしれないね』
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