第九章 夜に咲く花もある 四

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 そして、人としての肉体が滅んでも、影としての実態が残り、記憶が混乱してしまうらしい。それが、幽霊のようになり彷徨っている。 「二千年も彷徨うのか??」 『大体は他の影がやってきて、再び肉体を与えるか、仲間として引き入れ、影として生かすかして助けるよ』 「再び肉体を与える…………」  人として生き傷付いた心は、人の姿でないと癒せないという。 「生まれ変わり……」 『近いね』  すると、ここでの現象も見えてくる。そして繁栄させ、身を守ってきた。  孔士や龍平、亜子も影の一族なのだ。 『その影君達、ウチに連れて来てもいいよ』 「いや、一族を守っているから無理だろう」  しかし、俺が無理だというと、慌てて全匹が腹を見せて鳴いていた。 「クウウン」 「クウウウウン」 「クウウン」  ここに子孫がいるのならば、後千年くらい守っていたほうがいい。 『影は、多分、裏社会か地下社会に移動したがっている。だから、玲央名さんを引き入れた……だから……夏目ちゃんに服従しているよ』  服従しても、俺に犬を飼う余裕はない。しかも、牛程に大きいものが、十数匹いるのだ。
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