第九章 夜に咲く花もある 四

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 この餌代を考えると、首を振るしかない。 「ここには廣川の一族がいる」 『殺人事件を多発させているだろう……結局、人のルールには縛られていないのが、こういうモノ達の正義だからね』  いつの間にか、電話は英トに代わり、人間に融合した影を研究している者がいると教えてくれた。 「悪霊??」 『そう称される存在にも、成り得るから厄介だ』  脅されても、犬の餌代は俺の収入では無理だ。  すると英トは、四乃守で飼うと言ってきた。 『そろそろ人と影を離した方がいい。そこの亜子さん、孔子君、龍平君も望むのならば裏社会に来るといい』  孔士は公務員だが、裏社会の区役所に転属手配をするという。 「孔士君には、家族がいる」 『雨の日に生まれたと言っていただろう?そこには別の意味がある』  雨の日というのは、心音の事だという。  心臓を持たない影が、人の中に入ると、血流や心音で、雨の中にいると錯覚するらしい。だから、雨の日に生まれたと本人が記憶しているのならば、影の一族だという。 『通常社会は、次第に自分達以外を排除するようになった。生き難いのならば、別の社会に行けばいい』
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