第九章 夜に咲く花もある 四

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 穴の底の部分にあったのは、地下から染み出て来るガスで、吸ったら意識を失う。そして、放置しておくと、そのまま死亡する。  知っていれば対応可能だが、知らない場合はここで死亡していた可能性が高い。  そして、その事に気付いた廣川当主が、遺体をそのままに、この穴を埋めたのだ。それは、ここで亡くなった者が、この穴の秘密を知らない、外部の者だったからだろう。  それに中で幾人が死亡していたのか、確認していなかったかもしれない。それ程までに、中に在った骨は多かった可能性がある。 「埋蔵金のようなものですか……確かに、伝承はあります。しかし、いつ調べていたのですか???」  調べていたわけではない。 「埋蔵金の類いは、ほぼ暗記している」 「夏目さん……」  それは、埋蔵金を狙っているというわけではなく、そういう場所に事件が多かった為だ。そして、この場所に来るまで俺もその事を忘れていた。 「実際には、ここには埋蔵金はない。宝というのは子孫の事だろう。それか、この犬達だ」  俺は、この犬が宝物のような気がする。それに、揃えてみると十三匹いたので、愛娘の伝説にも近い。
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