第九章 夜に咲く花もある 四

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 その頃、良美の夫は、妻に失踪された惨めさと、廣川に居場所が無い事に悩んでいた。良美を愛していないが、良美のお陰で、廣川造園で良いポストに就き、更に周囲からの信用も得ている。良美を愛していなくても、必要としていた。 「四人の中に、義叔父が入っていないとすると……義叔父は失踪ですか……」 「まあね」  そこにも弥生は関わっていた。 「西海、弥生さんの元夫は健在だろう?」 「…………そうです。失踪届もなく、真面目に働いています」  つまりは、弥生は元夫の妻が、困っている事に気付いていた。元夫は見た目が良かったが、仕事が出来ず、一発当てるといっては博打にのめり込んだ。そして借金を作っては、妻に泣きつく。  そして、身寄りが無かった。 「入れ替わった」 「……そんな事が可能でしたか……」  息子の綾人がいなくなった時、もう廣川に居場所はないと悟ったのだろう。 「亜子さんは一人になるのが怖いと言ったが、警察官になった叔父がいる」  しかし、亜子は叔父を一族として見ていなかった。 「血の繋がった叔父でも、一族ではないと思える何かがあるのだろう」
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