第一章 十月に雨が降る

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 俺の姿は、完璧に猿なのだが、全身がオレンジの毛で覆われていて、今は少し長い。顔も毛で覆われているので、生きたモップのようだ。手の平も甲も毛で覆われているので、手を洗うとかなり泡立つ。  そして、猿になっていると、三歳児に満たない体重しかない。だから、道原が片手で摘まむと、俺を肩に乗せていた。 「このモフモフは俺のだと、親父にもきつく言っておきました」  道原は大のモフモフ好きで、俺の毛を頬擦りしていた。そして、再び匂いを確認すると、やや固まった。 「やっぱり、臭い…………」 「いや、そこの水道で水浴びした!今日は、犬用シャンプーを使用してみた。いい匂い!」  まあ、その後で色々と探検したので、すっかり汚れてしまった。 「犬用は我慢しますが、今!洗います!」 「ええ……今……」  道原もマイペースだ。  そして、道原の親父もマイペースで、道原の愛車を隠すと、改造した車を置いていたらしい。 「全く、親父も……どういうつもりなのだか……」 「親父さん、道原に構って欲しいのだろう」
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