第九章 夜に咲く花もある 四

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 俺が腕を組んで悩んでいると、ゴリラになった犬が車に入ってきて、勝手に端末を使用していた。しかも、プロ級に凄かった。 「え、綾人さんは生きているのか……」  そしてゴリラは、警察の情報をハッキングし、一枚の写真を見せた。それを辰見に確認させると、現在の綾人の姿だった。 「機密情報…………綾人さんは、警察関係者か……しかも、裏社会にいる……」  しかも、画像をよく見てみると、会った事がある。  警察幹部の叔父は、綾人にとっても叔父だった。そこを、すっかり忘れていた。 「公安職員か……同僚……」  警察機関になっているが、俺の目は誤魔化せない。綾人は、公安の職員だ。  そして、その事に気付かなかった自分が、ひどく間抜けに感じる。 「公安の職員は、家族も騙すけど……」  俺も家族には、公安だと言っていなかった。 「失踪扱いにしたのは、まずいだろう……」  婚約者がいるのに、失踪にしてしまったのは、どうかと思う。  するとゴリラが、紙にメモを書いて渡してきた。 『殿と若、姫と天女は家族で、離れれば産まれる。それは守るべき誓い』
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