第十章 夜に咲く花も在る 五

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 翌日、車の窓を叩かれて、俺が目を覚ますと、正面に青空が見えていた。夜が明けていたのかと、眩しさに目を細めると、再び窓を叩く音がしていた。 「夏目ちゃん、朝ご飯よ!」 「おはようございます」  挨拶をして気付いたが、俺は猿の姿ではない。俺が固まっていると、亜子がドアを開けて手を伸ばしてきた。 「夏目ちゃん、寝惚けているのかしら。可愛い!!!!お人形みたい」  亜子は叫んでいても、顔が無表情で真顔だ。お人形というのは、亜子の方が相応しい。  そして名前を呼びながら掴んだのは、俺の腕だった。 「俺は猿ではありません」 「夏目ちゃんは、夏目ちゃんでしょう!」  確かに俺は夏目だが、亜子が知っている夏目は猿の方だろう。  しかも、俺を抱えないで欲しい。 「可愛い!髪も肌も真っ白で、目がガラス玉みたい。ビー玉……子供の頃を思い出すね。ラムネの色ね」  俺はこれでも、もうすぐ八歳になる。抱えていい年頃ではない。だが、暴れると亜子に怪我をさせてしまいそうなので、大人しくしておいた。 「四乃守 なつめです」 「うんうん」  夏目 鷹弥と名乗ってはまずいだろう。
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