第十章 夜に咲く花も在る 五

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 そして、呼ばれていやって来た西海が、ぐったりと疲れていた。 「西海、三毛はどうした?」 「二度寝しました」  西海は三毛の夢に巻き込まれ、ここ百年の歴史を体験してきたという。 「それで、夢は見たのか?」 「百年分ほど、見てきました」  百年前は、やはり時効だろう、生きている当事者を探す事が難しい。 「西海、遡って三十年でいいぞ」 「まあ、半分の五十年が有効です」  まず弥生の人生は、産まれた時から不吉だった。 「弥生は、病院に置き去りにされています」 「どういう事だ????」  弥生の母親は、長男が病気だと聞き、弥生を産むと病院から帰ってしまったらしい。そして、そのままになっていたので、病院が弥生を家まで届けた。  そんな始まりだったせいなのか、弥生は三歳で猫を殺した。そして猫を殺した理由を、兄が大切にしていた金魚を食べたから成敗したのだと皆に説明した。  そして、近所に住んでいた老婆がうるさかったので、風呂で溺死させた。これは、事故で片付いている。 「弥生は三歳で、風呂場で老婆の背に乗って沈め、溺死させました」 「三歳から……」
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