第十章 夜に咲く花も在る 五

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 しかし、詳細に調べてみると、廣川家に滅ぼされた一族の末裔だった。その事実を隠して、廣川家に仕えていたのかもしれない。 「滅ぼすという強い意思だけが、子孫に継がれていったのか……」  意思や気持ちは、遺伝子で受け継ぐ事がない。それなのに、喜多村の一族は、廣川家を滅ぼそうとする遺志を受け継いだ。それは、本人達が自覚する事はなく、無意識に実行される事柄だった。 「呪いか……」 「戦地に在っては、自らの身を捧げても、廣川家を守ったとあります……が……」  そもそも、殺人鬼を生み出す一族で、戦地というその特性が生かされた状態でのみ、評価が高かったのかもしれない。 「弥生は、地の利に適った、様々な事故死を考えていて、そういう面では優れています」  その才能を、他の面で生かして欲しかった。そして、今、安定している事が、不思議になる程だ。 「これだけの事件になると、地方警察ではなく、本部が出てきます」 「本村か……」  本村も俺の生存に気付いているのかもしれないが、今はまだ会う訳にはいかない。 「急いで、逃げ帰る!」 「そうしてください」
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