第十章 夜に咲く花も在る 五

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 辰見の問題は片付いたので、もう帰ってもいいはずだ。 「しかし……地球には、様々な生き物がいるのですね……」  影の一族というのも不思議だ。  そして、研究したいので連れて来いと、英トがしきりに連絡してくる。 「犬と、ゴリラ。俺の家に来るか?」 「ワンワンワワワアン」  概ね了解のようだ。  しかし、犬達が気にしているのは、通常社会に残してゆく仲間の事だという。  影という事を忘れた影は、幽霊になって彷徨っている。これは、現在の犬達にはどうする事もできない。  しかし、これは自分の存在を教える事で解決できるので、いい機械を開発したいものだ。  そして、他に珠緒が土産の督促と、一秒でも早く帰って来いと、怒って電話してくる。 「辰見、孔士さんと龍平さんの件は納得したな」 「はい」  孔士と龍平は、だから若と殿であり、綾人と亜子の父でもあったのだ。 「こういう風にして、遺伝子を運ぶ。そういう方舟もあったという事だ……」  これを方舟とすると、俺達が遭遇している方舟とは異なっているのかもしれない。だが、方舟という存在は、実在している。
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