第二章 十月に雨が降る 二

1/21
前へ
/84ページ
次へ

第二章 十月に雨が降る 二

 道原の車に乗り込み走り出したが、土砂降りは豪雨に変わり、まるで滝の中を走っているかのようになった。道原の車にはセンサーが付いていて、問題なく道が分かるが、それでもこれでは危険だ。  周囲は夜のように暗いのに、時計を見るとまだ三時前だった。 「おやつの時間だ」 「酒はダメです」  三時で酒は飲まないだろう。俺が取り出したのは水で、少しパッケージに拘りがあっただけだ。 「そこの店で一休み」  豪雨の為に半分店仕舞いしたスーパーに入ってみると、総菜や弁当が入荷していなかった。そこで、道原の実家に引き返すと、キャンプ道具を積み込んでおいた。 「このまま実家で休憩しますか?」 「いや、未久さんが帰って来る前に逃げる!」  道原の母親、未久は美女だがとても怖いのだ。更に道原の姉の千賀も、凄い美女だがとても怖い。  そして再び出発すると、後部座席で三毛が丸まって眠っていた。 「三毛、ここで眠るな!」 「ごめんなさい」  三毛は夢で過去を見る。その夢には、何度も巻き込まれて酷い目に遭った。だから、同じ部屋で眠らないようにしている。 「はい。桃の缶詰」 「はい!ありがとうございます」  三毛は、この桃の缶詰が好物で、これ以上にない美味しい食物だと思っている。本物の桃を渡した事もあるが、桃の缶詰が至上らしい。 「それで、辰見の居場所はそこでいいのか?」 「はい。行くと言っていた場所です」  道原はその場所に、豪雨の為、ゆっくりと車を進めている。この感じだと到着する頃には、朝になっていそうだ。しかし、この雨では危険なので、これ以上の速度は望めないだろう。
/84ページ

最初のコメントを投稿しよう!

45人が本棚に入れています
本棚に追加