第十一章 時には雨

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「それは、俺も同じだ」  珠緒は犬に懐かれたいと必死で、庭に遊具なども用意していた。しかし、全く懐かれていない。 「ワンッワアアンン」 「ワンワオンワンワン」 「今までの生の中で、こんなに怖い一族には初めて会った。彼等は、遺伝子で編み物をしている。あんな連中に捕まったら、バラバラにされて、実験材料にされる」  あんなに短い鳴き声で、これだけの内容が詰まっていたのか。これは、道原の翻訳能力も褒めるしかない。 「その通りだ。それは認める」 「夏目さん、説得係でしょう!」  孔士は裏社会に家を建てているが、まだ出来上がるまでには時間がかかる。そこで、四乃守が住居を提供したのだが、病院の敷地内にあった職員用社宅だった。そして、そこに龍平と亜子も住んでいる。  よって犬達も四乃守の病院の庭にいるのだが、相変わらず影のままだ。だが、もう不思議なモノには慣れているのか、患者も全く動揺していない。むしろ、餌を持ってきては、一緒に遊んでいる。 『夏目ちゃん、僕も犬達と遊びたい……』 「珠緒ちゃんにも、いつか……慣れるだろう」
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