第十一章 時には雨

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 弥生は安定していたように見えたが、何がきっかけで変わってしまうのか分からなかった。  現に、事情が変わってしまった今、犬達が警戒するように、ここが何かに狙われていた。 「でもな、犬、予防接種だ」 「キャイイイン」 「キャイン」 「キャイイイイン」  どうして、牛のように大きく強いのに、予防接種を怖がるのだろう。そして、俺に擦り寄って泣くのは勘弁して欲しい。俺の姿は猿になっているので、まるで犬に虐められている小動物のようだ。 「はい、並んで移動!」 「キュウウン」 「キュウウン」  ついでに身体測定と、健康診断を行っておこう。  犬を連れて歩いていると、孔士が腹を抱えて笑っていた。 「犬を従えた、猿ですね!!!!!ははははははははは」 「その通りなので、笑えない」  それに孔士も狙われている。  犬を研究所に入れると、休憩室でサンドイッチを食べながら、つい孔士を観察してしまった。  孔士は影の一族で、この地球上の生物ではない。だから、人類の中に混じると、対応が二極化してしまう。
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