第十一章 時には雨

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 つまりは異質を排除しようとする本能と、取り込んでゆこうとする本能に分かれる。  喜多村や弥生は、その両極が、両方出てしまった稀有な存在だ。守りつつも滅ぼす。  孔士は、俺に見られている事に気付き、茶を持って近寄ってきた。 「夏目さん…………そんなに警戒しなくても、大丈夫です。弥生さんには、まだ。俺達を殺せません」  それは弥生に、現場を熟知してから行動する特性があるかららしい。そして、弥生は熟知した土地で、事故死にみせかけた殺人を好む。 「喜多村が全員失踪するとは思っていなかった」 「キッチン喜多村も、あのまま営業は出来ませんでしたよ」  営業を継続出来なかったかもしれないが、全員で失踪するとは思わなかった。しかも、警察や公安でも見つけていない。 「喜多村は何だったのだろう」 「そうですね……長い付き合いですが、俺にも分かりません」  実際、喜多村の一族が、こんな動きをするとは思っていなかった。だから、四乃守に頼み、廣川家を守っている節もある。 「亜子さんは……」 「母ですか……それが奇妙な事に……」
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