第十一章 時には雨

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 亜子は、何故なのか凛子と意気投合してしまい、裏社会に『時には雨』の二号店を出してしまった。しかも、その二号店は、自家野菜をふんだんに使用した定食をやり始め、じわじわと顧客を集めている。  この爆発的な人気ではないが、客が定着してゆく手法は、参考になる。 「母は人と会う事が好きなのです」 「無表情なのに……」  だが、好きという事は周囲にも分かるものだ。 「犬、予防接種が終わったら、半分は亜子さんを守れ」 「ワン!!!」 「ワオオオオン!!!」 「道原、翻訳」  そして、道原もすっかり犬に馴染み、最近は名前を付けて呼んでいた。 「ロバート、ロンド、ワトソンが向かうそうです」  しかし、洋風な名前だ。 「残った者で、孔士さん家族、龍平を頼む」 「ワンワンッワアアア」 「翻訳」  一番危ないのは龍平で、犬は電車に乗れないと嘆いていた。 「影なら見えないだろう?」 「ワンンンン」 「無賃乗車は犯罪だと言っています」  影の姿は、本当に影なので、見えていない者のほうが多い。だが、見えてしまう者もいるので、街中には出ないほうがいいかもしれない。 「ワオン」
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