第十一章 時には雨

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「夏目さんを守らなくていいのかと聞いています」  俺はこれでも、元は公安の職員だ。だから、護衛した側であって、自分の身は自分で守る。 「俺は大丈夫」 「ワアアアアアンワオン」  しかし、喜多村が一族でいなくなったという事が気になる。  喜多村は普通の人々で、弥生だけが特殊なのかと思っていた。 「道原、犬達の予防接種が終わったら、家に帰る」 「わかりました」  俺は犬達を護衛に付かせ、自宅に戻ろうとしたが、出てきた珠緒に捕まってしまった。 「夏目ちゃん。会いたかった」 「珠緒ちゃん、重い!」  珠緒に捕まったというよりも、珠緒にタックルされてしまった。これは、とても重い。  そして抱えられると、四乃守のリビングに連れ込まれてしまった。 「夏目ちゃん」 「珠緒ちゃん、事件が終わっていないので、早めに帰るよ」  珠緒は英トの電子カルテをハッキングし、俺に見せて引き留めようとしていた。  四乃守は、廣川や影の犬達を総称して、魂の者と呼んでいた。それは、本来、実態を持たずに、宇宙空間を移動してきた者達らしい。
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