第十一章 時には雨

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「魂が肉体に入り込んだ事が、不幸の始まりだったのか?」 「違うよ」  しかし、肉体を持たなければ、子孫を残す事が出来なかった。 「恋した事が不幸だった」 「恋??????」  この話のどこに、恋などというものがあっただろうか。 「肉体を持って生きて死ぬ事。きっと、魂は、そういう事が、輝いて見えたよ」  そして肉体を得て、生きる事を知った。 「終わりがある生は必死で、瞬く間も惜しんで生きていたよ。だからこの星は輝き、生命に満ちている。でもね……生きるという事は、辛い事や怖い事も多い」  それすらも含めて、生きる事は輝いて見えたと、珠緒が実感を持って説明してくれた。 「そうして、必死で生きた一族に、村尾、そして喜多村が恋をした」  そして、近く仕えつつも、試練を与える。 「そうなのか?????」  そういう風には考えていなかった。  しかし、珠緒によると、弥生を含め喜多村一族は、そういう面も引き継いでいるという。 「ただの殺人鬼だろう」 「女性は怨恨の殺人が多いね」  ならば、ただの怨恨殺人だろう。
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