第十一章 時には雨

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 だが珠緒のくれた、謎のお茶を飲んでいると、少し冷静になってきた。 「喜多村は、裏社会に追ってきている」  喜多村の一族は、廣川家の近くでしか生きる事を望まないのだ。 「亜子さんの所か……」  亜子は、『時には雨』という店をやっている。そこに喜多村が行くかもしれない。 「行くか」  ここで何故、亜子なのだといえば、喜多村は廣川の子孫を途絶えさせるつもりがないためだ。だから、まだ若い、孔士や龍平を襲うという感じがしない。 「珠緒ちゃん、ちょっと行ってくる」 「……分かった。明日、内容を聞くね」  珠緒も、こういう時は駄々をこねない。  そして、道原と亜子の店を訪ねてみると、道にまで列が出来る人気店になっていた。 「繁栄か……」  裏社会の『時には雨 二号店』という店は、小さな店で、店内にはテーブルが五つ程しかない。だが、カウンターには弁当が積まれていて、凄い勢いで売れていた。  店を出しているのは、古い四階建ての一階部分で、この規模の店にしては広めの厨房があった。  そして、厨房の中を覗いて驚いた。 「????」
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