第十一章 時には雨

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 店内で働いていた人物は、地元物産店で見たメンバーだった。すると、ここまで付いてきたのだろう。  もしかすると、だから亜子は、ここで働き口を作ったのかもしれない。 「売れているな……」 「裏社会には、田舎料理というものが無かったのです」  野菜中心の食事や、煮物がメインの食事などを、提供している店が無かった。  そして、そういう料理は特別美味しいというものではないが、飽きる事もないのだ。特別な日に食べる料理ではなく、日々に食べたい料理だ。 「しかし、廣川一族は繁栄で人が消えてゆく……」 「怖いです」  商売が成功する時、廣川一族の周辺では人が消えてゆく。 「んん???人が消える……ここでも、消えているのか……?」 「今の所、そういう報告はありません」  自ら失踪したのではないのならば、事件や事故に巻き込まれたという事だ。それが、集中して同じ時期、同じ場所で発生してゆく。 「あ、雲の動きが早い。上空では乱気流か……」 「天気予報では晴れでした」  雲が生き物のように形を変えていて、急速に発達している。これは上空の気流が乱れているのだろう。 「雷の音もする」
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