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「ずぶ濡れですね……」
闇になると、影が紛れて、分かり難くなる。しかし、周囲の建物の屋上から、連続して遠吠えが聞こえていた。
「ワアアアンンンオオオオン!」
「ワオオオオオンン!!」
「ウワオオオイウオオオオオ!」
そして次の稲光の瞬間、並んだ犬達のシルエットが見えた。
「囲まれている」
『時には雨』に並んでいた人々が、軒先でやり過ごそうとしたが、ずぶ濡れになり、亜子がタオル渡しながら、店内に案内していた。
「ワオオオオオン!!!」
「ワオオオオオンンン!」
これは、翻訳しなくても分かる。
ここで、見つけたのだ。
「道原、俺に銃を渡せ」
「はい」
猿の指は短いが、道原が支えているので大丈夫だ。
そして、『時には雨』の二階の窓を確認すると、そこには高笑いする弥生が見えた。
「ハハハハハハハハハハハハハ!!!」
弥生は自分の腹に手を当てて、力の限り笑っていた。だが、その声は豪雨に消されて、一階には届いていない。
「笑っている……」
弥生を見つめる犬達は、牙を剥いて唸っていた。
「弥生は何を見ている?」
「下にいる客ですか?」
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