第十一章 時には雨

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「ずぶ濡れですね……」  闇になると、影が紛れて、分かり難くなる。しかし、周囲の建物の屋上から、連続して遠吠えが聞こえていた。 「ワアアアンンンオオオオン!」 「ワオオオオオンン!!」 「ウワオオオイウオオオオオ!」  そして次の稲光の瞬間、並んだ犬達のシルエットが見えた。 「囲まれている」  『時には雨』に並んでいた人々が、軒先でやり過ごそうとしたが、ずぶ濡れになり、亜子がタオル渡しながら、店内に案内していた。 「ワオオオオオン!!!」 「ワオオオオオンンン!」  これは、翻訳しなくても分かる。  ここで、見つけたのだ。 「道原、俺に銃を渡せ」 「はい」  猿の指は短いが、道原が支えているので大丈夫だ。  そして、『時には雨』の二階の窓を確認すると、そこには高笑いする弥生が見えた。 「ハハハハハハハハハハハハハ!!!」  弥生は自分の腹に手を当てて、力の限り笑っていた。だが、その声は豪雨に消されて、一階には届いていない。 「笑っている……」  弥生を見つめる犬達は、牙を剥いて唸っていた。 「弥生は何を見ている?」 「下にいる客ですか?」
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