第十一章 時には雨

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 だが雨のせいで、並んでいた客達は店内に入った。そして、通りに残されているのは、俺達くらいのものだ。 「道原、二歩下がり、右に一歩」 「はい」  これで、俺達の姿は弥生には見えていない筈だ。そして、弥生が見ている場所を辿り、そこに何があるのか確認してみた。 「道路」 「ついでに、俺達も車に戻ります」  雨が目に入るので、うまく銃の照準が合わせられない。こんなに土砂降りだと、まるでシャワーを浴びているようだ。しかも、服を着たままなので、動きにくい。 「そうだな」  車の近くまで来ていたので、入っても大差ないだろう。  そして車内に入ると、タオルで顔を拭いた。 「道原、道路に出る」 「はい」  しかし。右からやって来た車に先を行かれてしまった。 「しまった、前方が見えない」 「夏目さんの目でも無理ですか?」  俺の目は天候に左右されないが、物を通過して見る事はできない。 「いやにゆっくり走っているな」 「雨で見え難いのでしょう」
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