第十一章 時には雨

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 前を走っている車は、車高があるので、近寄ってしまうと視界が余計に遮られる。そこで、バックして方向を変えると、一度大通りに抜け、道の反対側に回り込む事にした。  俺が助手席から後ろを確認していると、土砂降りの中、黒いワンボックスカーがゆっくりと『時には雨』に近付いていた。そして、店の前に近付くと更に速度を落とした。 「まずい、銃だ!」  ワンボックスカーの窓が開くと、中から銃を構えた腕が出た。そして、銃口が向いている先には、高笑いしている弥生がいた。それも車から銃口を向けているのは、数人いる。  俺も銃を構えようとしたが、方向が悪い。車の窓を破って撃ってもいいが、複数人に同時に撃ち込む事が出来ない。 「あ!!」 「うわ!」  そして、一瞬、雷の光と音が同時に落ち、周囲は影もない光に包まれた。それは地響きと振動も加わっていたので、近くに落ちた可能性が高い。  俺達の車は、衝撃で少し飛んだが、窓をしっかり締めていた事が幸いし、中には雷の影響が無かった。  しかし、後方では悲鳴が上がり、ワンボックスカーが吹っ飛び燃えていた。  そして、弥生の姿も消えていた。
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