第十二章 時には雨 二 

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 しかし、毛が長く全身にあるので、走ったくらいでは乾かなかった。 「やっと捕まえた!」 「あら」  そして、道原はタオルで俺を拭くと、大画面に西海から送られてきた資料を映してくれた。 「西海、仕事が速いな」 「こっちは、玲央名さんの資料です」  玲央名の資料は丁寧だ。  道原は俺をドライヤーで乾かしながら、時折、頬擦りしていた。 「うん、臭くありません」 「臭いと言うな!」  猿になっている時は、ほぼ全て見られても平気だ。だから、お尻も乾かして貰っている。  そして資料を読むと、道原が俺の頭にキスを繰り返していた。 「今回、落雷で亡くなったのは、四名。それと銃で撃たれて、弥生が亡くなった」  雷が落ちた瞬間、車から銃が発射されていたらしい。  俺も近くにいたのに、雷の音と光で、銃声まで聞こえていなかった。 「四名……」 「夏目さん、眠いのですか?ほぼ目が閉じられていますよ」  少し、長い瞬きをしただけだ。決して、眠っていない。 「四名は、喜多村キッチンの夫婦、そして弥生の子供が二名。弥生の子供は、亜子さんより少し下くらいの年齢です」
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