第十二章 時には雨 二 

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 もしかしたら弥生は、あの場所に雷を落とし、自分の焼死体を作り出そうとしたのではないのか。  そう考えると、高笑いして自分の姿を晒した意味も納得できる。自分の死を見届ける、観客を用意しようとしたのだろう。  だが、それでも雷は車に落ちた。そして、燃えていない二階に、銃で撃たれた焼死体が残った。  かつての廣川造園には、報道陣がやってきて、それぞれが真相を突き止めようとした。そして、弥生やキッチン喜多川の家族を探したが、遂に見つける事もなく、事件は迷宮入りになろうとしている。  殺人ではなく、死体遺棄のみという、弥生を擁護する意見も出たが、あまりに死体が多すぎると指摘を受けていた。  そして廣川造園は、謎の連続殺人の地として有名になった。弥生はサイコパスの殺人鬼、普通の隣人が、実は殺人鬼であったという恐怖として蔓延していった。  しかし、弥生の同僚だった者には、弥生は優しくていつも助けられたという者もいた。
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