第十二章 時には雨 二 

7/7
前へ
/191ページ
次へ
「呪いか……」 「夏目さん、ドッグフードが食費を圧迫しています……」  この影の犬達は、俺が飼っているのだろうか。 廣川家のものだろうと言いたいが、俺の家に年中来ては、食事を催促してくる。 「犬を飼う気はなかった」 「拾ってきたのですから、最後まで面倒を見てください!」  しかも、この影の犬達、千年は生きているのではないのか。  その最後までは、きっと面倒を見る事ができない。 「拾った場所に戻してくる……」 「捨て犬にするつもりですか!」  ならば猿薬を飲ませて、野生のゴリラにする。 「捨て犬がダメなら、捨てゴリラにする!」 「夏目さん!」  そんなに怒らなくてもいいだろう。  道原は最近、いつも怒っている。  俺が道原によじ登って、頬にキスすると、道原は座り込んで苦悩しながら怒っていた。でも、ドッグフードをトラック単位で注文してくれた。 「ありがとう、道原」 「…………稼ぎましょう……」  主に稼ぐのは俺だ。道原の翻訳では、自分の事務所の経費で終わる。 「あ、雨だ」  雨は、その土地が来訪を歓迎している印だという。  だから廣川家も歓迎したい。   完
/191ページ

最初のコメントを投稿しよう!

61人が本棚に入れています
本棚に追加